Windowsの強力な暗号化機能であるBitLockerは、パソコンの紛失や盗難時に情報漏洩を防ぐ重要な役割を担っています。 しかし、稀に回復キーを何度入力しても再び要求される「無限ループ」に陥ってしまうことがあります。

本記事では、BitLockerの基本的な説明から、この無限ループが発生してしまった場合の具体的な原因と対処法について、4つのセクションに分けて詳しく解説します。

1. BitLockerとは？

BitLockerは、Windowsに標準搭載されているドライブ暗号化機能です。 ハードディスクやUSBメモリなどのストレージ全体を暗号化することで、第三者による不正なアクセスからデータを保護します。 特にノートパソコンのように持ち運ぶ機会の多いデバイスでは、紛失や盗難時の情報漏洩リスクを大幅に軽減できるため、セキュリティ対策として非常に有効です。

BitLockerは、TPM（トラステッド プラットフォーム モジュール）というセキュリティチップと連携し、パソコン起動時のシステムの整合性をチェックします。 もし、システムに何らかの変更が検知されると、保存しておいた「回復キー」の入力を求め、正規のユーザーであることを確認します。

2. BitLocker回復キーの無限ループとは？

通常、回復キーを正しく入力すればWindowsは正常に起動します。しかし、何らかの原因で回復キーを入力しても再度同じ画面が表示され、先に進めなくなる状態を「無限ループ」と呼びます。

この現象は、Windows Updateの後や、ハードウェア構成の変更、BIOS/UEFI設定の変更など、システムに大きな変化があった際に発生することがあります。 セキュリティを保護するための機能が、予期せぬ形でユーザーを締め出してしまう皮肉な状況と言えるでしょう。

3. 無限ループの主な原因

BitLockerの無限ループは、単一の原因ではなく、複数の要因が絡み合って発生することが多いです。主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

• Windows Updateの不具合: 特定の更新プログラムが原因で、システムの整合性チェックに問題が生じることがあります。
• ハードウェアの変更: メモリの増設やストレージの交換など、ハードウェア構成を変更した際に発生することがあります。
• BIOS/UEFI設定の変更: Secure Boot（セキュアブート）の設定変更などが影響する場合があります。
• TPMの不具合: システムの整合性をチェックするTPMチップ自体に問題が発生しているケースです。
• 周辺機器の影響: 接続しているUSB機器などが原因で、起動プロセスに問題が生じることがあります。

4. 無限ループの解消法

BitLockerの無限ループに陥ってしまった場合でも、慌てずに対処することで解決できる可能性があります。以下の手順を順番に試してみてください。

ステップ1：回復キーを正しく入力する

まずは基本ですが、事前に保管しておいた48桁の回復キーを正確に入力しているか再度確認しましょう。

ステップ2：周辺機器を取り外す

USBメモリや外付けハードディスクなど、接続しているすべての周辺機器を取り外してから再起動してみてください。

ステップ3：コマンドプロンプトからBitLockerを一時停止する

回復キー入力画面で「このドライブをスキップする」を選択し、詳細オプションからコマンドプロンプトを起動します。 以下のコマンドを入力して、BitLockerを一時的に停止できる場合があります。

１．manage-bde -protectors -disable c: と入力し、保護を一時停止します。

２．manage-bde -status c: と入力し、Enterキーを押して状態を確認します。

３．ロックされている場合は manage-bde -unlock c: -rp （ここに48桁の回復キーを入力） と入力し、ロックを解除します。

ステップ4：BIOS/UEFI設定を見直す

PCを再起動し、特定のキー（メーカーによって異なりますが、F2、F12、Deleteキーなど）を押してBIOS/UEFI設定画面に入ります。 「Secure Boot」の項目を探し、一度無効にしてから起動を試みてください。

ステップ5：システムの復元を試す

詳細オプションから「システムの復元」を選択し、問題が発生する前の状態にシステムを戻すことで解決する場合があります。

最終手段：OSの再インストール

上記のいずれの方法でも解決しない場合は、OSの再インストールが必要になる可能性があります。 この場合、ドライブ上のデータはすべて消去されてしまうため、実行する前に専門家へ相談することをお勧めします。

BitLockerの無限ループは厄介な問題ですが、原因を切り分け、適切な対処法を試すことで解決できる可能性は十分にあります。万が一の事態に備え、日頃から回復キーのバックアップを確実に行っておくことが最も重要です。